伊勢のうなぎのこと|関東風・関西風と伊勢まぶし|うなぎ料理 喜多や
伊勢は、うなぎの町です。外宮の門前には天保13年(1842年)にさかのぼる「伊勢鰻事始」の記録が残り、伊勢志摩には約40軒のうなぎ屋があり、地元の人はそれぞれお気に入りの「マイ鰻屋」を持つと言われます。
はじめて伊勢でうなぎを召し上がる方へ、知っておくと少し楽しくなる五つのことを。
Five things to know before eating unagi in Ise.
伊勢とうなぎには、深い関わりがあります
三重県には、古くからうなぎを食べる習慣が根付いています。海と山に面した三重ではうなぎが手に入りやすく、明治時代には養殖も盛んでした。県内の津市はうなぎの消費量が多い町として知られています。
伊勢志摩地域には約40軒のうなぎ屋が点在し、伊勢の人にとってうなぎは、特別なごちそうであると同時に日常の延長にある馴染みの味でもあります。「自分のマイ鰻屋を持つ」文化がある——と、伊勢市観光協会も紹介しています。
はじまりは、親孝行の物語でした
伊勢でうなぎが広まる起点は、天保13年(1842年)。親への孝行のためにうなぎを商った若者が、伊勢を治める山田奉行から銅五貫を賜ったという実話が『宇治山田市史』に残されており、「伊勢鰻事始」と呼ばれています。この物語は「孝行鰻」の名で、今も外宮の門前に語り継がれています。
伊勢でうなぎを食べることは、この土地に180年あまり続く、もてなしと孝行の物語の続きに加わることでもあります。
関東風と関西風。そして、伊勢には
うなぎの調理には、大きく分けて二つの流儀があります。関東風は背開きにして白焼きし、蒸してから焼き上げるため、ふんわり柔らかく仕上がります。関西風は腹開きにして蒸さずに直火で焼き上げる「地焼き」で、香ばしさと歯ごたえが持ち味です。
そのうえで、伊勢には伊勢のやり方があります。喜多やが創業以来守っているのは「箸焼き」——金串を打たず、長い箸だけで一尾ずつ返しながら、脂を「ころあい」に収めていく焼き方です。串で身を固定しないため身が締まらず、皮は香ばしく、身はふっくらと焼き上がります。
ご飯にも、この土地の流儀があります。白飯にあらかじめ秘伝のたれをまぶし、その上にうなぎをのせる「伊勢まぶし」。名古屋のひつまぶしのように出汁をかけるものではありません。
価格の目安と、ゆっくり味わう時間のコツ
伊勢市内のうなぎ専門店では、丼・重はおおむね2,000円前後から、上位の献立で8,000円前後までが一つの目安です。一例として、喜多やのご予算目安は1,650円(お子様用ミニ)〜8,250円(うなぎ会席・雅)です。
時間のコツを、二つ。第一に、外宮周辺は12時前後と土日祝が最も混み合います。比較的ゆっくりご案内できるのは、開店直後の11時台か、14時以降です。第二に、うなぎ専門店は営業時間が短めの店が少なくありません。喜多やの店内お召し上がりは11:00〜15:30(ラストオーダー15:00)で、当日の仕入れ分がなくなり次第、閉店する場合があります。ご参拝の計画には、早めの昼食をおすすめします。
なお喜多やでは、お席のご予約は承っておらず、ご来店順のご案内です(お持ち帰りのみ、お電話でご予約いただけます)。
よくある勘違い、三つ
「伊勢のごちそうといえば、伊勢えびでは?」
伊勢えびは、もちろん名物です。ただ、外宮の門前に伊勢鰻事始の記録が残る通り、うなぎもまた、伊勢の食文化に深く根付いたごちそうです。
「うなぎは夏(土用の丑)だけのもの?」
土用の丑の日は江戸時代に広まった習わしですが、うなぎは一年を通して味わえます。ご参拝の記念のごちそうとして、季節を問わずどうぞ。
「ご飯に出汁をかけて食べるのでは?」
それは名古屋の「ひつまぶし」の流儀です。伊勢の「伊勢まぶし」は、たれが米一粒一粒に染み渡った状態を、そのまま味わいます。土地ごとの流儀の違いも、うなぎの楽しみのうちです。
参考資料:公益社団法人 伊勢市観光協会「地元民もおすすめの伊勢の鰻名店」/伊勢市観光協会「孝行鰻 伊勢鰻屋事始」/『宇治山田市史』(伊勢鰻事始・天保13年の記録)
最終更新:2026年9月13日